自動車部品や素材といった「BtoB(法人間取引)」が中心の企業が、CMなど広告活動に力を入れている。企業の姿勢をアピールすることで、投資家への浸透を図るほか、若手やその親世代にも訴求して人材確保につなげる狙いだ。CMの単価が比較的安くなっているという事情も積極的な広告活動を後押ししているようだ。
モビリティ向け素材などを手掛けるJX金属(林陽一社長、東京都港区)は昨年末、芦田愛菜さんを起用した新広告シリーズ「JXキュン属」をスタートした。テレビCM「JXキュン属(暮らし)」編の放映をはじめ、続編や屋外広告などを展開。キーワードの「JXキュン属」は、最先端半導体などに使われる銅をはじめとした金属素材の可能性で未来を〝キュン〟とときめかせたい、との思いを込めているという。従業員のモチベーションを表現する言葉にもなっている。
CMでは、銅が身の回りのさまざまなところで使われ、暮らしを支えているというメッセージを、芦田さんと同社マスコットキャラクター「銅の妖精カッパーくん」のコミカルなやりとりで発信している。同社としては上場を控える中で、ブランディングを図る狙いもあるようだ。
一方、「パーパス」という、やや堅いテーマを取り上げたのは古河電気工業。テレビCM「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」編を制作し、昨年末から放映を開始した。
グループのパーパスは、創業140周年を機に昨年制定した。CMでは15秒のアニメーション映像で、未来の社会を「青写真」のように描写。事業を展開する「情報」「エネルギー」「モビリティ」の領域に関連したシーンが登場し、「持続可能な社会が実現していく様子を表現している」という。
テレビCMとともに、街頭の広告なども健在だ。ミネベアミツミグループで、車載半導体などを手掛けるエイブリックは、東京都内の繁華街に大きな垂れ幕の広告を掲出した。同社は過去に、森林にプロジェクションマッピングするという国内初とみられるCMを発表した実績もあり、アナログとデジタルの〝二刀流〟の広告活動を展開している。
従来は「縁の下の力持ち」とされ、一般消費者にはあまりなじみのない業界でも、「BtoC(個人向け取引)」のさまざまな取り組みが活発になっている。
幕張メッセ(千葉市美浜区)で毎年開かれる「ニコニコ超会議」でも最近、日本精工や三井化学といった企業が出展し、Z世代向けに訴求して注目された。出展ブースでは、工作や実験の展示・体験などを通じて、若い世代に企業への関心を持ってもらおうという工夫がにじむ。こうしたさまざまなチャンネルを駆使したアピールが今後も見られそうだ。